田宮二郎さんは、「白い巨塔」(1966 山本薩夫監督)のイメージが人々にも定着していたのでしょう、1970年代にテレビ・ドラマで主演するようになると、主にTBSで放映されたその多くのタイトルには「白」がつけられました。最初は1973年に放映開始の「白い影」です。原作は渡辺淳一さんで、孤独の影を背負った外科医を田宮さんが演じていました。外科医で不治の病にかかっているなど、「白い巨塔」にイメージが重なる部分もあり、渡辺さんの原作らしく男女の恋愛模様も濃厚で、「ちょっと子供が観てはいけない」匂いがしていたのを覚えています。原作小説の題名は「無影燈」ですから、「白い影」というのは田宮さん主演をアピールするためのうまいタイトルのつけ方と思います。この作品が視聴率が良かったので、田宮さんはTBSの連続ドラマの主力となり、以後の作品も「白い滑走路」「白い地平線」「白い秘密」「白い荒野」とタイトルに「白」が入ります。
テレビに映ってからはすっかり「白」が定着した田宮さんですが、大映時代、「白い巨塔」以前に田宮さんのイメージに合っていたのが「黒」シリーズです。1作ごとに完結する作品群なのですが、共通するのは、企業の間の熾烈な競争、産業スパイや陰謀が横行し、業績のためには手段も選ばない非情な闘いが描かれていることです。
26日の当ブログにハピイさん画のポスターが出ていますが、「黒の試走車」(1962 増村保造監督)がその第1作です。d3697287
自動車会社の新車の情報を巡り、ライバル会社が凄まじい争いを展開します。田宮さんの上司を演じるのが高松英郎さんです。高松さんは「巨人と玩具」(1958  増村保造監督)でも同じような人物を演じているしピッタリの鬼部長ぶりです。高松さんが「この企画第一課は、スパイが仕事だ!」と堂々と公言するぐらいですから、盗撮、盗聴なんてのは当たり前です。読唇術を使う、ライバル社を混乱させようと、ニセの情報をわざとつかませる、脅迫、ゆすり、もうほとんどヤクザと変わりません。田宮さんもライバル会社の新車の設計図を何とか手に入れようと、図面のコピーの紙屑をあさったりします。さらには自分の恋人(叶順子さん)をライバル社の部長(菅井一郎さん)に色仕掛けで近づかせて、情報を盗ませます。極秘情報を得て目的を果たしますが、菅井さんに体を奪われた叶さんは、自分をまるで「道具」に使った田宮さんを「あなたはキチガイよ!」と批難し、菅井さんにもらった指輪を田宮さんに投げつけ「さよなら」と去っていきます。田宮さんの同僚の船越英二さんはライバル社に脅され、自社の情報を流していて、発覚すると飛び降り自殺してしまいます。
増村監督らしい内角高めにズバズバ投げ込むような演出もあって滅法面白いですが、高度経済成長とはこういう非人間的な企業戦士たちによって成し遂げられたのかとあらためて思わされます。そういえば、電通の新人女子社員が激務に苦しみ自殺した事件がありました。電通の社員手帳に載っていた「鬼十訓」の中にも「取り組んだら放すな 殺されても放すな 目的完遂までは……」と書いてありましたが、まさにそれが当たり前の時代を映し出した映画だったのです。    (ジャッピー!編集長)
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