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昭和大好きブロガー達による、昭和歌謡と映画のこぼれ話 あの映画は、あの曲はまさにそんな事だったのか!と感動再び!

昭和大好きブロガー達による、昭和歌謡と映画のこぼれ話
あの映画は、あの曲はまさにそんな事だったのか!と感動再び!

2019年05月

杉葉子さんと成瀬巳喜男監督

5月27日の当ブログで書いたように、先頃亡くなられた杉葉子さんは『青い山脈』(1949 今井正監督)のヒロインとして戦後の自由な風を象徴しました。しかし、そのイメージが強すぎたのか、以後あまり主役はありませんでした。その杉葉子さんが堂々、上原謙さんと夫婦を演じ主役となったのが『夫婦』(1953 成瀬巳喜男監督)です。
戦後になって不調の続いた成瀬巳喜男監督ですが、市井の夫婦の倦怠を描いた『めし』(1951 成瀬巳喜男監督)(←この作品にも杉さんは傍役で出ています)はキネマ旬報ベストテンでも第2位と評価も高く、一気にスランプを脱し、以後、怒濤のように名作を連打していきます。特にこの『めし』がもっとも大きく寄与したのは、林芙美子さんの原作に出会ったことでしょう。林さん原作による成瀬作品は全6本あり、その頂点が『浮雲』(1955 成瀬巳喜男監督)であることは言うまでもありません。
その『めし』と同じく、夫婦の倦怠と疲弊感を描く『夫婦』ですが、当初は『めし』同様、上原謙さんと原節子さんがキャスティングされていました。しかし、原さんが病気になってしまい降板、当時まだ24歳の杉さんが妻役に抜擢されたのです。『石中先生行状記』(1950 成瀬巳喜男監督)、『めし』の傍役に続き成瀬作品3作目にして主役となりましたが、実はその前にも主役級で出るはずだったのです。『めし』のひとつ前の作品『舞姫』(1951 成瀬巳喜男監督)という作品です。川端康成さん原作の文芸映画で、主演は高峰三枝子さん、その娘のバレリーナ役で杉葉子さんが出ることになっていたのです。それが、高峰三枝子さんが、杉さんが娘役ではいやだと言い出しておろされてしまったのです。高峰三枝子さんといえば、戦前からの大スターですから、会社も監督も言うことを聞くしかなかったのでしょう。なぜ高峰さんがそんなことを言ったのかは分かりません。杉さんが『青い山脈』という爆発的なヒット映画のヒロインでしたから、「食われて」しまうと思ったのでしょうか。結局、娘の役は岡田茉莉子さんになります。これがデビュー作ですから、まだ何のキャリアもない新人の方がいいと思ったのかもしれません。(岡田茉莉子さんは戦前の二枚目俳優・岡田時彦さんの遺児ですから話題になったとは思いますが) 
『舞姫』出演が決まって感激し、やる気になっていた杉さんは落胆します。「悔しくて悔しくて」と回想されています。その2年後に原節子さんがやるはずの大役に起用というのは成瀬監督らしいなと思います。というのは、戦前、松竹蒲田にいた成瀬監督、当時始まったばかりのトーキー映画を撮らせてほしいと希望を出すも、城戸四郎所長から「正月のご挨拶映画なら撮らせてやる」と言われたり、あげくは作風の似ていた小津安二郎監督を引き合いに出され「小津はふたりいらないんだ」と言われ、PCL(東宝の前身)に移籍させられます。大人しい成瀬監督はこういった屈辱を受け、苦汁を飲まされてきた経験があるのです。なので、大スターの一言で役を降ろされた杉葉子さんの気持ちが分かったのではないかと思うのです。
杉さんんも成瀬監督の抜擢に応え、24歳独身の杉さんが見事に所帯やつれした妻を演じきり、杉村春子さんも褒めるぐらいの好演を見せたのです。その後、『山の音』(1954 成瀬巳喜男監督)の女事務員、『妻の心』(1956 成瀬巳喜男監督)では三船敏郎さんの妹役で成瀬映画に出演、プライベートでもよく成瀬監督の家に遊びに行ったり、相談にのってもらったりしたそうです。
(ジャッピー!編集長)
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杉葉子さんと香川京子さんのやり取りが◎『女の暦』

昨日、一昨日の当ブログで先頃亡くなられた杉葉子さんについて、街娼役を演じた『東京の恋人』(1952 千葉泰樹監督)、「お静」を演じたコメディ『天晴れ一番手柄 青春銭形平次』(1953 市川崑監督)のことを書きました。
一方、『青い山脈』(1949 今井正監督)の「寺沢新子」のイメージで明朗、優等生的な役はやはり多かったです。そんな中で、僕の好きな作品が『女の暦』(1954 久松静児監督)です。原作は壷井栄さん。1954年といえば、日本中の涙をしぼった『二十四の瞳』(1954 木下恵介監督)が公開された年です。『二十四の瞳』が9月公開、『女の暦』は6月公開ですが、ちょうど同じ時期に小豆島でロケしていて、久松監督は「いい場所はみんな『二十四の瞳』にとられた」とボヤいたそうです。
『女の暦』は、5人姉妹のうち、下の二人が小豆島に残っています。その二人を演じるのが杉葉子さんと香川京子さんです。四女の杉さんは島の小学校の教師で、PTA会長(清川玉枝さん)から何度も縁談を持ち込まれますが「私はずっと教師をやるし、結婚なんかしない」といって断っています。五女の香川さんには恋仲の男性がいますが、そんな杉さんになかなか言い出せません。香川さんは姉を「へんくつ、変わり者」と呼びますが、仲のいい姉妹です。実際、長期ロケで杉さんと同室だった香川さんは「さっぱりした方で、本当のお姉さんみたいに親しくなりました」と言っています。」と決め、張り切ります。いろいろ頑張って法事が無事開かれ、結婚して他の土地に住む姉たちが帰ってきます。長女が田中絹代さん、次女は花井蘭子さん、三女が轟夕起子さんという豪華メンバーです。田中さんはやんちゃ盛りの男の子が5人もいて大変そうです。杉さんたちが用意した鶏肉やあんこを「おみやげ」に持ち帰ります。花井さんは夫(三島雅夫さん)とケンカばっかりで「ずっとここにいたいわ」などと言いますが、いざ三島さんが迎えに来ると仲の良い夫婦ぶりを見せます。これを夫婦の機微が分からない杉さんがイヤな顔で見るところも上手いなあと思います。轟さんは社会活動家の夫が獄中にいて苦労しています。このように、それぞれの生活や事情がある姉たちは法事が済むとさっさと帰ってしまいます。「もう少し泊まっていけばいいのに……」と杉さんと香川さんは少しがっかりします。いわば、『東京物語』(1953 小津安二郎監督)の逆ヴァージョンです。杉さんと香川さんの好演で後味のいい名作となりました。
姉たちが集まったので香川さんは結婚したいことを話します。相手を知らない杉さんは「ねえ、誰なの?」「私の知ってる人?」など矢継ぎ早に質問します。この様子を見て田中さんが「まるで12の扉みたいね」というと、花井さんが「いやだ!『20の扉』よ!」と訂正します。当時、NHKでやって
いたクイズ番組ですね。また、杉さんは教職の研修か何かで東京に出掛けます。妹の香川さんにおみやげでストッキングを買ってきます。「650円もしたのよ」といいますから相当な高級品です。という風に、昭和の庶民の暮らしの細かい様相がうかがえるのも興味深いです。何より、若い娘が「法事」をやることを目標にしたり、忙しくてもやって来る姉たち。ごく当たり前の家族の絆が、今観ると本当に特別な輝きをもっているように見えてしまいます。つくづく「昭和」は遠くなったと感じるのでした。
(ジャッピー!編集長)

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『騎士団長殺し』と『木乃伊の恋』(鈴木清順監督)

文庫本になった『騎士団長殺し』(村上春樹著/新潮文庫)を少し前に読了しました。僕は村上春樹さんの熱心な読者で、今まで、だいたいハードカヴァーで買って読んでいました。『1Q84』なんかも出てすぐ読んだりしましたのですが、ちょっと飽きてきたところもあり、今回はハードカヴァーで購入せず(個人的に緊縮財政もあり)、文庫になるまで待っていたのです。結果、今回、とても面白く読めました。
今月のはじめ頃、第1巻(文庫版は4分冊)を読み始め、あれ、これはどこかで聞いた話……と感じました。主人公の「僕」が住む小田原の山荘でどこからともなく夜中に「鈴」の音が聞こえてきて……物語が大きく動くきっかけとなるのですが、これ『木乃伊の恋』(1973 鈴木清順監督)と同じじゃん!と即時に思ったのです。
『木乃伊の恋』は、フィルムで撮られていますが、映画ではなく、元々、テレビの「恐怖劇場アンバランス」の一篇として1970年に製作された作品ですが、あまりにアヴァンギャルドな内容でお蔵入り、ようやく1973年、深夜にひっそり放映されたといういわくつきの怪作です。だいたい、清順監督は怪作揃いなわけですが、この『木乃伊の恋』はその中でも飛び切り、怪作中の超怪作であります。お蔵入り以前に、よくテレビ局がこんな作品を撮らせたものだと感心します。(僕はのちに名画座で観ました)
『木乃伊の恋』は、円地文子さん原作ですが、元になっているのは上田秋成の『春雨物語』の中の「二世の縁」という話です。「鉦」の音がどこからか聞こえてきて、それに導かれるように穴を掘ると、ミイラが「鉦」を叩いています。ミイラを掘り起こすと、ミイラは生き返って?あろうことか覗きをしたり、村の後家さんとセックスに耽溺するという所業を続けます。生きている時は聖人だったお坊さんが蘇えるととんでもない好色なミイラになっていたという話です。ミイラと交わった女性からはミニ・サイズの金色の菩薩がゾロゾロ生まれてくるという場面もあり、鈴木清順監督はやっぱり狂ってる!(←褒め言葉です)と思わずニヤリとしたものです。『騎士団長殺し』も、こちらは「鈴」ですが、音が聞こえてくる穴を掘り返すと、ミニ・サイズの「騎士団長」が出てくるのもよく似ています。
と思っていたら、文庫1巻目のうしろの方で、主人公に免色という人物が「上田秋成の『春雨物語』を読んだことがありますか?」と訊いて、「二世の縁」という話とよく似た状況ですねと話す所がありました。なるほど、元ネタが同じなんですね。似ているのは当然です。今月、各新聞に載った「村上春樹さん特別インタビュー」を読むと、「二世の縁」という話が好きでモチーフにしようと思っていたと語っています。また、村上さんの父親の実家が浄土宗のお寺で、お父さんが亡くなったときにお経を読んでくれた住職のお寺に上田秋成のお墓があった話も語っています。
村上春樹さんが『木乃伊の恋』をご覧になっているかは不明ですが、村上春樹さん、鈴木清順さん、まったく異質なお二人が同じ話に興味を持ったというのが面白いですね。 (ジャッピー!編集長)
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杉葉子さんがキュートな『天晴れ一番手柄 青春銭形平次』

昨日の当ブログで、杉葉子さんの『東京の恋人』(1952 千葉泰樹監督)における悲哀に満ちた役について書きました。『青い山脈』(1949 今井正監督)で戦後の新時代を象徴するような女子学生を演じた杉さんが、こちらの作品では戦争の傷跡が残る社会で必死に生きる女性の役でした。役柄に幅の広さを見せた杉さん、1953年にはコメディーにも出演されています。『天晴れ一番手柄・青春銭形平次』(1953 市川崑監督)です。タイトル通り、ご存知、銭形平次がまだ「有名」になる前の青春時代を描く時代劇ですが、市川崑監督の才気が炸裂する爆笑喜劇となっています。当時は長谷川一夫さん主演の『銭形平次』シリーズが人気を集めていましたから、そのパロディにもなっています。劇中、まだ新米の平次(大谷友右衛門さん)が「伝七、人形佐七、若さま侍……ああ、俺はいつになったら……」と上が詰まっているのを嘆く場面がありましたが、当時、「捕物帳」が流行っていたことが分かります。
冒頭、いきなり車が銀行に突っ込み、猫の死体が映ります。あれ?と思うと、「おっと、これは東京ですな、間違えた。江戸、江戸と……」ととぼけたナレーション(伊藤雄之助さん。子分の八五郎も演じます)が入ります。平次は飴屋を営んでいますが、貧乏生活です。豆腐を買いに行って、杉葉子さんに「お前の店の豆腐は小さくなったな」とみみっちいことでケチをつけたりします。平次お得意の「投げ銭」もゴムをつけてリターンするようにしたり涙ぐましい倹約生活です。しかし、このケチ生活がツキも呼びます。八五郎が連れて来た猫が平次の店から小銭をくわえて逃げ出し、それを二人で追いかけると、猫がある家から小判をくわえ出てきます。「あれ、一文が小判になっちゃった。返さなきゃ」と入っていくと、そこは何とニセ金作りのアジトで大手柄を立てます。あ、今、「アジト」と書きましたが、この映画、時代劇なのに「あっしたちのアジト……もとい隠れ家が……」という科白や「ここにサインせい!」「は?」「署名じゃ!」なんてやり取りもあり笑わせてくれます。
豆腐屋の杉葉子さんはのちの恋女房になる「お静」さんで、平次とは好き合っているのにケンカばかりでキュートな魅力を発散します。捜査で足にマメを作った平次を介抱したり優しい面もあれば、捜査のため乞食の恰好をした平次&八五郎が平次の家でメシを食ってると、泥棒と間違えた杉さんが「ここをどこだと思ってんだ! 後年、名親分になる平次さんの家だよ!」と気の強いところも見せます。また、ゴム付きの投げ銭について、「いいと思うわ。でも、有名な親分になったら止めてね。みっともないから……」としっかり女房になりそうなセリフも面白いです。可愛くて、しっかり者の「お静」を演じた杉葉子さんが忘れられません。  (ジャッピー!編集長)
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追悼・杉葉子さん 『青い山脈』と『東京の恋人』

先日、5月15日に女優の杉葉子さんがお亡くなりになりました。90歳ですが、杉さんには若々しいイメージがあるので残念でなりません。僕は2012年4月に杉葉子さんのトークショーを観たことがあります。「銀座シネパトス」(←この名画座も今はありません……)の「今井正監督特集」のときです。今から7年前ですから、杉さんは83歳でしたが、とてもそんなお歳に見えませんでした。姿勢が良くて、ハキハキと話をされていました。たしか、このときもアメリカにお住まいと言っておられました。
このときに観たのはもちろん『青い山脈』(1949 今井正監督)『続・青い山脈』(1949 今井正監督)です。敗戦後の日本に明るい民主主義の光をともした作品は、主題歌とともに大ヒット。当時ご覧になった方には本当に憧れの映画だったと思います。この「銀座シネパトス」の上映、トークショーにもその年代と思われる方が多く来られて、懐かしそうにスクリーンを見つめていらっしゃいました。
そのヒロイン「寺沢新子」に抜擢された東宝第2期ニューフェイスの杉葉子さんです。このとき21歳の杉さんですが伸び伸びと女子学生の役を演じ(主演の池部良さんは31歳で高校生役!)、まさに新しい時代のシンボルとなりました。このところ当ブログでは、やはり最近亡くなった京マチ子さんのことをよく取り上げていますが、京さんが大映で本格的に映画出演をスタートさせたのも1949年(昭和24年)、タイプは正反対ながら、京さんと杉葉子さん、お二人が登場して「解放された戦後」のイコンというべき存在となったのが象徴的です。京マチ子さんの大映第1作『最後に笑う男』(1949 安田公義監督)(←当ブログ5月22日参照)で、サーカス団員役の京さんはグラマラスな肢体を披露し、肉体によって「抑圧」からの解放を体現しましたが、杉さんは『青い山脈』の中で水着姿を見せます。当時としては、長身でスレンダーな杉さんの水着姿は、京さんと違ってセックスを感じさせませんが、やはり新時代の到来を感じさせます。
僕が杉さんの映画で印象的なのは、『青い山脈』で共演した原節子さんが主演の『東京の恋人』(1952 千葉泰樹監督)です。 『青い山脈』以来、優等生的な役の多い杉さんが街娼役で、体を壊して亡くなるときに手鏡で花火を見ようとするシーンは思い出すだけで泣けてきます。(この映画については、当ブログ2018年10月11日「『東京の恋人』と『万引き家族』の花火」に詳しく書いたのでお読みください)
数々の映画にご出演され、見事な演技を見せて
くれた杉葉子さんのご冥福を心よりお祈りいたします。
(ジャッピー編集長!)
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きたさん
1975年「空飛ぶ鯨」でデビューしたちゃんちゃこのメンバー。デビュー40周年を経て昭和の素敵な時代の歌や出来事を再発見
ジャッピー!編集長
映画雑誌「ジャッピー!」を主宰する編集長
映画や昭和歌謡に底知れぬ造詣を示す昭和博士
ハピイ氏橋
昭和のあれやこれやをイラストにして解説。
独自の目線で昭和の面白さを掘り起こすイラストレーター
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