今年亡くなった夏木陽介さんと星由里子さんの共演作で僕が大好きな作品があります。「若い狼」(1961 恩地日出夫監督)です。
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これは恩地日出夫さんの監督デビュー作で脚本もご自身で書かれています。当時の東宝では、少し前に作家の石原慎太郎さんに監督作を撮らせるというので、東宝の助監督やスタッフたちが猛反発、紛糾していました。このことについては当ブログ2017年11月22日、23日に書いていますが、「若い獣」(1958 石原慎太郎監督)製作の引き換えに藤本真澄プロデューサーは「これからは大いに若手助監督を登用し、年間二人は監督に昇進させる」と約束します。その方針もあって、助監督室で作った雑誌に載せた恩地さんの「どぶねずみ」というシナリオが藤本さんの目にとまり、27歳で監督昇進が決まったのです。
「若い狼」と改題されましたが、原題の「どぶねずみ」のように社会の底辺でもがき蠢く青春を描いています。映画は夏木陽介さんと田中邦衛さんが少年院を出所するシーンから始まります。松村達雄さん演じる所長は「少年院出身だからって恥じるな。胸をはって明るく生きていけよ」と言って送り出します。しかし、物語はそういうご都合的なハッピーな展開にはなりません。夏木さんはいったん田舎に帰りますが、炭坑が閉鎖され寂れていて仕事もありません。恋人だった星由里子さんが上京していると聞き、夏木さんも東京に行きます。再会した星さんはすっかりズべ公になってしまっていますが、ともかく二人で暮らそうと仕事を探します。しかし、少年院を出ていることで、働きたくても雇ってくれる所はありません。一緒に出所した田中邦衛さんもヤクザになっています。夏木さんも結局は悪い仲間に入っていくことになります。夏木さんが中学時代の先生に向かって「みんな、口ではうまいこと言いやがるんだ!堂々と胸をはって生きろってな!」と言うのが悲痛です。また、星さんが夏木さんのことを相談したヤクザが「そいつに会わせてくれ。フフッ……俺も3年前、少年院あがりさ。ヤクザにだけはなるなよと言いたかっただけさ、こうなっちまった俺が言うんだから間違いねえ」と言うのも印象的です。
このヤクザは、皮肉にも組織に利用された夏木さんに刺されて死んでしまいます。夏木さんはまた刑務所に送られ、独房で泣き叫ぶシーンで映画は終わります。真面目に働いて出直そうと思っていた夏木さんは、冒頭の出所からわずか3~4日のうちにまた罪を犯してしまうのです。恩地さんは学生運動をやっていたこともあり、社会に対しての怒りに満ちた堂々のデビュー作でした!  (ジャッピー!編集長)
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