昨日の当ブログでも書いたように「菅井きん」という芸名がピタリとはまるように、多くの作品で市井に生きる普通のおばちゃん役をこなした菅井きんさん。数多い出演映画の中で、僕が一番印象に残っているのが「七つの弾丸」(1959 村山新治監督)です。
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映画の冒頭、パシッと白いスーツを着こんだ三國連太郎さんが登場します。彼は銀行強盗を計画していて、その下見をしています。彼は学歴を偽っていたため会社を辞め、友だちを頼りに大阪に行ったときに日射病で倒れ、助けられた交番で拳銃を奪います。9発の銃弾のうち、2発使って事件を起こし残りが7発。(←これがタイトルとなっています)恋人(久保菜穂子さん)にも大きいことを言っていて大金をつかもうと銀行強盗しようとしています。
この三國さんの行動と並行して、無関係の3人の生活が描写されます。ひとりは銀行の出納係で演じるのは今井健二さんで、まだ悪役になる前で真面目な青年です。近く恋人との結婚する予定で「式なんて簡単でいいよ」と言ってますが、格式にうるさい母(村瀬幸子さん)は「ちゃんとした式をやるもんだ」と田舎の山を売ろうと言い出します。そんな小さい諍いはありますが誠実に生きています。
2人目は銀行近くの交番に勤務する巡査(高原駿雄さん)で、一所懸命に昇進試験の勉強に励んでいます。貧しい農家の次男だか三男の彼は地元に働き口がないため、東京に出てきて一旗あげようと頑張っているのです。
最後は、伊藤雄之助さん演じるタクシー運転手です。
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いいかげんな性格で事故を起こしタクシー会社を転々とし、妻子を置いて愛人とアパートに暮らしています。
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この奥さんを菅井きんさんが演じます。菅井さんは必死に夫の居所を見つけます。夫の事故の借金を払ったことをきいた伊藤さんは改心して菅井さんと3人の子どもたちとまた暮らします。
この3人の庶民の生活が綴られ、映画の残り4分の1ぐらいになって一気に三國さんの強盗事件に合流します。三國さんが強盗に入り、たまたま目の前にいた今井さんが撃たれ、交番の高原さんも射殺され、三國さんが乗り込んだタクシーの伊藤さんも殺されます。三國さん、伊藤さんというふたりの名優が最後の最後になってはじめて交錯する、このあたりの構成が見事としか言いようがありません。三國さんは警察に逮捕され、死刑となります。
そして事件から約2年後と字幕が出ます。今井さんの母親は発狂しており、かつての恋人は見合い結婚し新婚旅行の車中です。高原さんの田舎で法事が行われています。殉職ということで「二階級特進」となってますが、息子を失った親の悲しみはそんなことで癒されません。「東京なんかに行くからだ……」と愚痴ると、来ている人に「ここらに働き口なんかあるかよ」と言われます。このエピローグの中でも最も胸がつまるのが、働き手の夫・伊藤さんを失った菅井さんです。貧しさのあまり、デパートで万引きをして捕まります。子どもの見ている前で保安係に引っ張られ泣き叫ぶ菅井さん。このラストーシーンが鮮烈に心に焼き付いています。この映画は冒頭に「いかに殺人というものが被害者の人生を狂わせる所業であるか」というようなテロップが出ますが、まさにそのテーマが明確になる作品でした。
1955年に実際に起こった強盗事件を基にしているそうですが、高度経済成長が始まる中の貧富や都市と地方の格差などが浮かび上がる橋本忍さんのシナリオが素晴らしいのです。三國さんが襲う銀行は新橋駅前、荒川のガスタンク、遠景に見える東京タワーなど当時の東京風景も貴重です。
(ジャッピー!編集長)
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