大映が倒産した後、江波杏子さんは各社の映画に出演されますが、代表作となったのは「津軽じょんがら節」(1973 斎藤耕一監督)であります。
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斎藤耕一さんは東映~日活でスチール・カメラマンとして映画活躍、特に有名なのは「狂った果実」(1956 中平康監督)で撮った石原裕次郎さん、北原三枝さんのスチール写真です。クランクイン前に撮られた写真が、ある意味、映画のムードを作り出していた感もあります。裕ちゃんの信頼も厚く、石原裕次郎写真集「海とトランペット」も出しています。その後、監督に転身されたので、斎藤耕一さんは「映像派」と呼ばれ、流麗な「画」作りに手腕を発揮されました。「女賭博師」シリーズ(1966~1971)で一世を風靡しましたが、フランス映画のような作品に出たいと思っていた江波杏子さんにとっては斎藤監督との出会いはこの上ないものだったわけです。
映画は、津軽の寂れた漁村に真っ赤なコートを着た江波さんが若い男(織田あきらさん)を連れてやって来るところから始まります。
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江波さんの年下の愛人・織田さんは東京でヤクザの幹部を刺したチンピラで追われています。彼を匿うためと、ここに父と兄の墓を立てるために江波さんは故郷である漁村に帰ってきたのです。鈍色の空、荒々しく打ち寄せる波、何もないどん詰まりのような風景をとらえた映像が素晴らしいのです。まさに「映像派」斎藤監督の面目躍如です。
江波さんはかつて西村晃さん演じる漁師の息子と駆け落ちし捨てた経緯もあって、閉鎖的な村ではあまり歓迎されていません。江波さんは漁師相手の飲み屋で働き「父ちゃんと兄ちゃんの墓を立てるまではここを動かないから」と言い張りますが、故郷は受け入れてくれないのです。重苦しい灰色に閉ざされた風景の中、江波さんの真っ赤なコートが「よそ者」感を象徴します。images (7)

若い織田さんは、村に来た当初は退屈でうんざりした様子でしたが、盲目の少女(中川三穂子さん)をからかっているうちに、その純真さに魅かれるようになります。本当の「よそ者」である織田さんは中川さんと一緒にいることに安らぎを感じ、村に留まることにします。逆に、故郷に居場所を見つけられない江波さんはひとりで去っていくことを決めます。織田さんの寝顔に向かって「あんた、良かったね、故郷が見つかって……」と呟く江波さん。出稼ぎ現場で死んだ息子の骨壺を抱える西村さんがちょうどバスから降りて無言のまま通り過ぎていき、江波さんが赤いコートをひるがえして故郷を去っていく、そのときの表情! 忘れられない名演でした! 
「キネマ旬報ベストテン」1位に輝いた本作のフォトジェニックな映像の中に孤独を浮かび上がらせた江波杏子さん、見事に「キネマ旬報女優賞」を獲得されたのでした。 (ジャッピー!編集長)
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