「第10回船堀映画祭」での沢島忠監督の追悼企画でいらした「芸能座」の依田豊隆さんのトークによれば、沢島監督が生前、最後に撮りたいと熱望した「忠臣蔵」、キャストには北大路欣也さん、松方弘樹さんを考えていたとのことです。(松方さんの方が監督より先に亡くなってしまいました……)東映で培った時代劇の伝統を残されたかったのだと思います。
その北大路さん、松方さんのお二人が売り出し中の頃に沢島監督がお撮りになったのが「水戸黄門 助さん格さん大暴れ」(1961 沢島忠監督)です。
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「水戸黄門」といえば、この人!月形龍之介さんですが、その月形黄門シリーズの最終作にして、黄門様と助さん・格さんの出会いを描いた、いわば「水戸黄門エピソード・ゼロ」であります。お二人を助さん・格さんに配し、脚本は増村保造作品などでお馴染みの白坂依志夫さんを起用して新機軸を狙ったのです。
画面からはみ出さんばかりの大きな文字でタイトルが出たあと、フンドシ一丁の助三郎(松方さん)と格之進(北大路さん)が相撲をとっていて、汗だらけの体を洗うように海に飛び込みます。一気に駆け抜ける若さあふれる冒頭はもうアイドル映画です。二人は気のいい若者で、農家のおじいさんが草刈りしているのを見て、手伝いをします。このおじいさんは実は黄門様(月形さん)なのですが、この時点で二人は知りません。城内では若手の登用試験があり、次席家老のドラ息子(こういう役はやっぱり菅貫太郎さん!)は前もって試験問題を不正に入手し合格。それどころか助さん格さんがカンニングをしていたとウソをつくので、会場で二人は大暴れ、謹慎になってしまいます。そこへ「お呼び出し」があり、「お手討」かと覚悟して白装束で伺うと、何とあの農家のおじいさん。黄門様直々の裁定で二人は合格、晴れて黄門様の付き人になるのです。
 
何でも当時、日大で不正入試事件があって、それをストーリーに取り入れたそうですが、他にも昭和36年当時の世相を風刺している場面、科白が続々と出てきます。黄門様が自分の畑で作った野菜を手渡し「これは農薬なんぞ入っておらんぞ」と言ったり、落語家や講談師が「お犬様」を蹴っ飛ばして捕まっていたり、庶民も苦しむ綱吉の独裁に「政治の貧困というやつじゃな」と言ったりします。ラストは、助さん・格さんたちがたくさんの犬を連れて柳沢吉保(小沢栄太郎さん)の屋敷に殴り込み、柳沢がたまらず部下に「かまわぬ!斬れ!」というと、二人が「おっ、てめえ、お犬様を斬るってのかい!自分で出したお達しを自分で破るのか!」と言うのが痛快でした。
また、菅さんが偉い家老(岡田英次さん)の所に行き「合格」を嘆願に行く場面、岡田さんは「馬鹿者!」と一喝し出ていきますが、部下の花沢徳衛さんがあっさりと「小判が底に入った饅頭」を受け取り、試験問題の写しを置いていきます。別室で岡田家老「いいか、金を受け取ったのもお前、問題を渡したのもお前だぞ」と言い含めます。いざとなったら責任をとらされるのは部下という姿勢、今の時代も「秘書がやったこと」というお決まりの逃げ口上、悪い奴のやり口は変わりませんねえ。
そういった風刺とスピーディーな立ち廻りに加え、助さんと渡辺マリさん、格さんと北条喜久さん、二組のカップルがブランコに乗ったり、黄門様の若き日の恋まで語られロマンチックな面も楽しく、さすがは沢島時代劇!であります。  (ジャッピー!編集長)

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