「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」(2018 前田哲監督)を観ました。だいぶ前になりますが、渡辺一史さんの書かれた「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」(北海道新聞社。現在、文春文庫)を読んで大変感銘を受けたので、あの圧倒的な原作を「どう、映画にするのだろう?」と公開前から興味があったのです。正直なところ、ノンフィクションに限らず、原作を読んでいると映画にガッカリすることも多いので心配な気持ちもありましたが……、観て感心しました。お見事!と言いたくなりました。
原作は、24時間介護が必要な鹿野さんが病院ではなく「家で」暮らすという自立の道に奮闘する上で立ちはだかる色々な問題を提起しながら、周りに集まったボランティアの人たちの声を集めています。この鹿野さんに関わったボランティアはのべ500人といわれ、原作で取り上げているのも、その中の主だった人だけなんですが、それでも10人以上の方々に取材しています。そしてこの部分の深掘りが「介護」「福祉」といったことはもちろん、「人が生きる」という根源的なテーマを浮かび上がらせます。著者の渡辺さんもボランティアとして「鹿野邸」に出入りして自分を見つめるように、それぞれの人が「他者」との関わりから「自分」を考えていく様が明らかになっていくのです。
映画の成功は、これらの幾人かのボランティアを複合して、田中くん(三浦春馬さん)と美咲さん(高畑充希さん)の二人を創り出し、軸にしたところにあると思います。映画の限られた尺の中でこの二人に絞り、青春映画の側面もあります。ボランティアをやるうちに三浦さんは一時自信を失い、何となく始めた高畑さんはハマっていくという対照的な心の動きという構成にしたのが上手い!と思いました。それで、原作のエッセンスはしっかりと掬い取られているし、ユーモアもあって楽しめる作品になっていました。
何より、鹿野さん役に大泉洋さんを起用したのが「当たり!」です。我儘だけど、周囲に愛される鹿野さんのキャラクターにピッタリでした。「探偵はBARにいる」シリーズ(2011~2017 橋本一監督、3作目は吉田照幸監督)、「恋は雨上がりのように」(2018 永井聡監督)、「焼肉ドラゴン」(2018 鄭義信監督)と大泉さんの出られる映画、どれも良いなあ。あと、鹿野さんのお母さんを演じた綾戸智恵さんの起用といい、キャスティングが素晴らしかったです。病院から自宅に戻るのを反対され、高畑さんが「鹿ボラをなめんなよ!」というシーンにはグッときました! 女医役の原田美枝子さんの台詞「あんた、いい家族もったね」といいたくなりました。  (ジャッピー!編集長)
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