一昨日の当ブログで「第92回キネマ旬報ベストテン表彰式」を観覧したレポートを書きました。今回は日本映画部門「万引き家族」(2018 是枝裕和監督)、外国映画部門「スリー・ビルボード」(2017 マーティン・マクドナー監督)がベストワンに選出されました。納得の結果です。「キネ旬ベストテン」というとどうしても劇映画が浮かぶわけですが、「キネ旬」には「文化映画」部門というのがあって、すぐれた文化映画が表彰されています。
今回の「文化映画ベストワン」になったのは「沖縄スパイ戦史」(2018 三上智恵、大矢英代監督)です。三上監督は元はアナウンサーだった方で、ドキュメンタリー映画監督になられてからは「沖縄の基地」問題にこだわって活動を続けています。今まで作った3作「標的の村」(2013 三上智恵監督)が1位、「戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)」(2015 三上智恵監督)が2位、「標的の島 風かたか」(2017 三上智恵監督)と、いずれも力作で高い評価を受けました。そして今回1位となった「沖縄スパイ戦史」ですが、これはすごい映画です! 
今回の作品は、戦時中に沖縄の民衆がいかに戦争に利用されたかを、当時を知る方々の証言や記録を丁寧に掘り起こして明らかにしていきます。本土から派遣された軍人により組織された隊は普通の戦闘ではなく、「ゲリラ」「スパイ」を念頭に置いた訓練を受けます。米軍が上陸するという前提がそこにあります。その隊では14、15歳の少年たちが自分の身長より高い銃を抱えて活動していたのです。
また、ある島では「山下」という名の男が学校の先生として赴任、優しいアニキのような先生に子どもたちや住民たちも心を許します。ところが、「山下」というのは偽名で、その男は住民たちを島から追い出すミッションをおびて派遣された軍人だったのです。軍事上の作戦で島を利用するためです。しかも、住み慣れた島を追い出された人々はマラリアの蔓延する他の島に移住させられ何百人も亡くなります。一方、元「山下」は戦後、和歌山かどこかで工場経営者になってのうのうと暮しているのです。
他にも、物資の入った倉庫で作業させられた女子学生が軍の「処刑リスト」に入っていたというひどい話も出てきます。軍の機密を知ったからには生かせておけないというわけです。完全に「沖縄」の人々を守ろうという気はなく、軍事、作戦のためには殺してもいいというスタンスです。また、住民同士にスパイ疑惑を広めて監視させ合うなど、考えられえる限りのヒドイことが実行されていました。これらを遂行していたのは「陸軍中野学校」出身のその道のプロ軍人です。彼らは冷徹に作戦を進めることしか頭にないのです。
先の戦争で「沖縄」が「捨て石」になったことは「激動の昭和史 沖縄決戦」(1971 岡本喜八監督)などでも描かれよく知られていますが、いわば「裏の戦争」でこんな残虐で悲惨なことがあったのです。「権力」というものは国民を守ろうなんてひとつも思っていないことが普遍的であると分かります。そして、映画の最後にそれは現在も変わらないということが、今の「沖縄」や「日本」の状況に繋げてメッセージとなります。「基地があればそこがまず攻撃されるのが当然です」という元・自衛官の人の言葉も出てきました。沖縄の「県民投票」も間近に迫った現在、多くの人に「沖縄」「基地」といったことに目を向け考えるためにも観てもらいたい作品であります。 (ジャッピー!編集長)
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