昨日の当ブログで、佐藤純彌監督のデビュー作「陸軍残虐物語」(1963 佐藤純彌監督)のことを書きました。陸軍内部の絶対的なヒエラルキーによって圧殺される補充兵を描いた作品には、やはり、作家の処女作というのは「原点」があるのです。のちに「君よ憤怒の河を渉れ」(1976 佐藤純彌監督)が中国で大ヒット作になった(6~7億人が観たと言われています!)ことについて佐藤監督は「文革時代に酷い仕打ちを受けた人々の共感を呼んだのだろう」と分析していますが、佐藤監督のテーマは常に「組織対個人」にあるのです。
佐藤監督の第3作「廓育ち」(1964 佐藤純彌監督)は、監督にとって初の女性が主人公の映画ですが、これも、廓という「組織」の中でもがき苦しみ何とか脱しようという点でまさに佐藤監督作品です。三田佳子さん演じる「たみ子」は母に捨てられたあと、廓を経営する三益愛子さんに引き取られ養女として育てられます。この三益さんがひどい女で「この世は金だ」思考の権化で、「男はんの体の重さを札束の重みと思え!」「男を騙して金を稼ぐことだけ考えてりゃいいんだ!」といった台詞が連発
されます。そんな義母のもと、たみ子は子どもの頃から男女の営みを見せられたり、一番ひどいのは上客のじじい(三津田健さん)にまだ小学生のたみ子の「将来性」を見てくれと頼むところです。じじいは戻ってきて指を拭きながら「いやあ、いい体してるよ」などと三益さんに報告します。本当に吐き気のする場面です。
三益さんによって「廓の女」になることが既定路線になっているたみ子は、ここから脱出するために学問を身につけようと必死で勉強し優秀な成績をおさめます。しかし、結局は「廓の女」にさせられてしまいます。猛勉強しているときに知り合った京大医学生(梅宮辰夫さん)と恋に落ち、梅宮さんはたみ子に「廓にいたって君は君だ。好きなんだ」と誠実な言葉を囁きますが、いざとなると大学教授のお嬢さんと婚約するのです。そんな梅宮に向かって、たみ子が「うちらのこと、廓育ちと言うけど、みんなだって家とか学閥とかいう廓の中にいるんじゃないの」と言うのが印象的です。また、ラスト、たみ子がダンナ(宮口精二さん)に毒を飲ませ「こいつが言ってることを聞いているうちに、こんな奴がいるから廓がなくならへんのや……」という科白は「祇園の姉妹」(1936 溝口健二監督)の終幕の山田五十鈴さんの台詞を思い出させます。やっぱり、佐藤監督らしい「反組織」「反権威」映画です!
そして、この「廓育ち」を傑作たらしめているのは三田佳子さんの熱演によるところも大きいです。三田さんはずっと後「Wの悲劇」(1984 澤井信一郎監督)で各映画賞の女優賞を獲得しましたが、若いい時から演技は目をみはるものがありました。東映という男性路線の会社に所属だったので評価されることが少なかった面があったと思いますが、この「廓育ち」なんか観ると演技派なんだと分かり
ます。
(ジャッピー!編集長)

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