昨日の当ブログ「ショーケンと黒澤明監督」に書いたように、萩原健一さんが「影武者」(1980 黒澤明監督)に出演した際、完璧を求める黒澤監督のムチャぶりに頭がおかしくなりそうだったという話です。
馬に乗って海岸を疾走する撮影で、黒澤監督は馬が前脚を上げてのけぞる、いわゆるウイリーを撮りたかったようですがうまくいかず、何度も繰り返してもOKがかかりません。そのうち、馬が跳ねてショーケンは海へ飛ばされてしまいます。切り落としになっている海で、下手したら溺死です。やっとの思いで上がってきたら、黒澤監督の第一声は「おい、馬は大丈夫かあ?」だったそうで、こんなことが続くうちに、自分でも目つきが変わっていくのが分かったといいます。
こんなこともあったそうです。ショーケンが「これは何なんだよ、映画の撮影か、本当の戦(いくさ)なのか……」と思った合戦シーン、ショーケン扮する武田勝頼が命令し、歩兵たちが一斉に槍を突き上げ上り坂を進んでいくる場面で、一本の槍の切っ先が後ろにいる歩兵の目に突き刺さってしまったのです。その歩兵に扮していたのが阿藤海(のちに「快」)さんです。すさまじい悲鳴をあげてうずくまる阿藤さんを見たショーケンはすぐに「待った、待った! 救急車だ!救急車を呼べ!」と叫んだのです。すると、黒澤監督、「馬鹿野郎!何でおまえがカットをかけるんだ!」と怒鳴りつけたそうです。阿藤さんは眼球が飛び出し、今にも落ちそうになっていたそうです。ショーケンが撮影を止めなければ、阿藤さんは失明していたでしょう。
このエピソードで思い出したのが、今村昌平監督の現場の話です。「にっぽん昆虫記」(1963 今村昌平監督)で、北村和夫さんが沼に入り鎌で雑草を刈るシーンを撮ることになりました。底なし沼を前にたじろぐ北村さんに「重要なシーンなんだ。さあ、いこう!」とせきたてる今村監督。おそるおそる入った北村さんに「もっと真ん中に入って」と容赦しません。「これ以上入ると、オレ沈んじゃうよ」と言っても「沈んだっていいんだ」と平然と答えたといいますからスゴイです。
黒澤さんにしても、今村さんにしても、自分の思ったとおりの「画」を撮るためには人も殺しかねません。それだから、「巨匠」と呼ばれる仕事ができたのかもしれません。さらに、この話にはオチがあって、手足にヒルが吸いつき、顔にアブがまとわりつきながら胸まで沼に浸かった北村さんが死ぬ思いで演じたこのシーン、完成後の本編を見るとカットされ使われていなかったそうです! 
(ジャッピー!編集長)
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