当ブログ4月11日「ショーケンと黒澤明監督」、12日「黒澤明監督と今村昌平監督 巨匠たちの狂気」で書いたように、萩原健一さんが、黒澤明監督の現場で「頭がおかしくなるくらい」の経験をしたわけですが、「影武者」(1980 黒澤明監督)といえば、主役の勝新太郎さんの降板が一番の話題となりました。この完璧主義者・黒澤監督に、やはり「俺流」の勝新太郎さん、二人の王様がいては衝突するのは当然の帰結かもしれません。僕も、勝新さんの降板のニュースを聞いたとき、どこか「やっぱりな……」と思った記憶があります。どちらも妥協しない人だから、完成すれば相当な作品になったでしょうが、その前の段階で、どちらが主導権を握るか、ある意味、二人とも「ガキ大将」だったのかもしれません。
勝新太郎さんが武田信玄とその影武者の二役となっていましたが、当初は勝さんと若山富三郎さんのダブル主演で企画されたそうです。ところが、若山さんが勝は現場で我儘だから一緒にやるのはイヤだと断ったといいます。実の兄でさえ、嫌がるわけですから、勝さんがいかに自由奔放な人かが分かります。そんな勝さんにも、黒澤さんは強い言葉を投げかけるので、リハーサルにも出なくなってしまいます。ショーケンは心配になって、勝さんがこもっていたホテルの一室を訪ねます。その部屋で、勝さんはさる有名女優と大麻を吸っていたそうです。この女優さんは、勝さんにくっついていれば「影武者」に出れると思っていたようです。ショーケンが「いい加減にリハーサルに出てきてくださいよ」と説得しても、勝さんは「役作りが……」とゴニョゴニョ言って埒があかなかったそうです。ショーケンは何度かこの部屋に通って説得を試みたそうです(内田裕也さんに同行してもらったこともあるとか)が、勝さんは応じません。どうも、もう黒澤監督に対して意地になっていた感じです。
そして、撮影に入って自分の演技をビデオで撮ろうとしていた勝さんに黒澤監督が激怒、勝さんはその場で衣装もカツラも取って降板となってしまったのです。(この日はショーケンは撮休でその降板現場は見てないそうです) 勝さんは自分で監督したこともあるし、朝起きると自分の頭の上でカメラが回り「自分=勝新」という被写体を撮っているというほどの全身表現者ですから、現場に二人の演出者がいてはぶつかるのは当然です。
ショーケンは、のちの「ブラック・レイン」(1989 リドリー・スコット監督)のときも勝さんを懸命に説得します(当ブログ4月8日参照)が、どちらも徒労に終わってしまいました。それにしても、幻となった勝新太郎さんの「影武者」、どんな映画になっていたか……観たかったです。
(ジャッピー!編集長)
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