昨日はバイト(単純肉体労働)があって、上野に行きました。上野に来るのは久々でしたが、天気がいいこともあって、上野公園のあたりは多くの人で賑わっていました。外国人の旅行者も目立ちましたが、何といっても、「修学旅行」の子どもたちがそこら中におりました。だいたいが、男子・女子混合の6~7人できっと「班別行動」だったのでしょう。手には「修学旅行のしおり」を持って楽しそうに歩いていました。ちょうど夕方にさしかかる時間だったので、集合時間なのでしょう、そこかしこに制服を着た中学生や高校生の小グループが集まってきました。そして、先生たちもそれぞれのチェック・ポイントから帰ってきて談笑していました。皆さん、ホッとしたようにリラックスした表情をされていました。
僕も、何年か前には、「チェック・ポイント」にいる側でしたから、「班別行動」の一日、無事に終えたときのあの気持ちは分かりますねえ。今は、こうして楽し気な子どもたちを微笑ましく見ていますが、「向こう側」にいるときはいろいろ大変だったなあと遠い目になってしまいます。
上野で「修学旅行」といえば、当然『駅前旅館』(1958 豊田四郎監督)を思い出します。井伏鱒二さん原作の文芸喜劇で、ポスターには『喜劇 駅前旅館』となっていますが本篇のタイトルには「喜劇」は入っておりません。正式には『駅前旅館』です。森繫久彌さん、伴淳三郎さん、フランキー堺さんのトリオ他に森川信さん、山茶花究さん、左卜全さん、藤村有弘さん等々個性的なキャストが並び、女優陣も淡島千景さん、淡路恵子さん、草笛光子さん、浪花千栄子さん(体操服姿!)など芸達者な人が出ていて文句なく楽しめます。
この映画の当時(昭和33年)は、日本の映画観客数がピークだった年ですが、この上野に押し寄せる客の数もハンパなく、冒頭、上野駅周辺にどどっと押し出される修学旅行生や会社の慰安旅行の人の波はすごい光景です。旅行社の添乗員(フランキー堺さん)も大忙しです。当時は、子どもの数も多いですから、大広間に生徒がすし詰めですし、ちょっとませた女子高生3人組(リーダーが市原悦子さんです!)に翻弄されたり、やけっぱちになって生徒たちの前で三味線でロカビリーを歌ったりします。(←最高!) 
当時の若いパワーに旧世代もたじたじとなってしまうのが描かれますが、同時に、「電話一本で団体客が確保できる時代だからな」と旅館の経営も新しい流れになっていることも語られます。昔気質の番頭の森繫久彌さんも、女将の草笛さんからあっさりと「もう、あんたみたいな“立派な”番頭を使うような所じゃないのよ」と皮肉を言われ、クビになってしまいます。森繫さんの「おう、じゃあオレの番頭の力を見せてやる!」と道行く人を次々に呼び込み、意地を見せる場面が痛快ですが、結局クビになって、甲府(だったかな)あたりの旅館を目指して馬車で揺られていき終わります。馬車の後ろを見ると、自動車がびっしり列をなしているのですが、このラストも「新しい時代が古い時代を押しつぶす」メタファーになっています。ちょうど、『砂漠の流れ者(ケーブル・ホーグのバラード)』(1970 サム・ペキンパー監督)のラスト、ジェイソン・ロバーズさんが自動車に轢かれてしまうのと同じですね。時代の変化の中ではじき出される者への挽歌を奏でているのです。
今じゃ、もっと急激な変化が世の中を覆っています。上野駅もきれいになって「ハードロック・カフェ」なんか入っているし、この『駅前旅館』のモデルとなった旅館も既に10年前ぐらいに取り壊されました。電話どころか、ネットで予約し、カードで支払い、アパホテルとかがガンガンと建ち並び、修学旅行だって様変わりしています。どこかの地方から来た見知らぬ子どもたちが売店でソフトクリームを買ったり、ガチャガチャ(上野らしくパンダのグッズが主)に100円玉を次々に突っ込んだりするのを見ながら、『駅前旅館』では、子どもたちは各自「お米」を持参してきたのだなあと思い出しました。 (ジャッピー!編集長)
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