5月23日の当ブログで、『駅前旅館』(1958 豊田四郎監督)を取り上げました。この作品が大ヒットしたので、同じトリオで『駅前』シリーズが誕生(こちらは「喜劇」とつきます)、全24作が作られます。僕は昔、2005年に「シネマアートン下北沢」で「駅前シリーズ全作上映」という特集をやったときに通い詰めて、24本を「順番」通りに全作観ました。5月から6月にかけて『駅前旅館』から第12作『喜劇 駅前金融』(1965 佐伯幸三監督)まで各3本立てで4週、9月から10月にかけて第13作『喜劇 駅前大学』(1965 佐伯幸三監督)から『喜劇 駅前桟橋』(1969 杉江敏男監督)まで各3本立てで4週、計8週、毎日曜日に出掛けて制覇したのです。最初から24本制覇するつもりだったので、そのために体調を整え、上映時間に遅刻しないようにかなり早めに家を出るようにして万全の体制で臨みました。下北沢までは、僕の家からは東武東上線→山手線→小田急線と3つの路線を乗り継ぐので、いちばん怖かったのが、事故などで遅延することでしたが、運よく事故もなく電車が運行され、無事に達成できたのです。
我ながら、すごい執念だと思いますが、名画座育ちの僕にとっては、こうして一つのシリーズをまとめて観るなんてことは当たり前のことでした。また、昔の名画座というのは、そういう風に一つのシリーズや、一人の監督の全作を網羅した特集なんてのがよくプログラムされていて、それに通って「系統的」に映画を観るなんてことができたのです。そうして、映画史や監督の作家性を辿ったりし、さらに映画への興味がつのりズブズブ沈んでいったわけです。僕もそうやって『座頭市』も『昭和残侠伝』も『野良猫ロック』も『若大将』も、その他、様々なシリーズをコンプリートしていったのでした。
「シネマアートン下北沢」は、その前身の「シネマ下北沢」が1998年オープンという比較的新しい名画座でしたが、映画興行以外の理由で閉館になってしまったのが残念でなりません。他にも、バタバタと名画座が消えていってしまい、今は、そもそも名画座自体も数が少なくなってしまいました。それでも、残った名画座は頑張っていろいろな特集を繰り出してくれています。
しかし、今の名画座を巡る状況は本当に厳しいものがあります。僕もある老舗名画座で番組作りに関わっていますが、まず上映できる映画が少なくなっているのが一番の問題です。ある「監督」や「俳優」の特集をやろうとラインアップを組んでも、フィルムがジャンクされて存在しない、フィルムの所在が分からない(大手でなく制作プロの作品など)、フィルムが古くなって上映に耐えられない……等々。その結果、せっかく特集を組んでも、全作一挙上映どころか、代表作がない「飛車角」落ちみたいなラインアップに
なってしまったり……。フィルムセンターもとい「国立映画アーカイブ」で借りるとお金もかかるし、上映回数にも制限がかかっていまいます。映画会社ももう新たにフィルムを焼くことはしないのです。できるだけ、フィルムでかけたいのですが、そもそもフィルムがないという事態。それでデジタル素材で上映ということも増えていますが、そうなるとお客さんからしたら、「何だよフィルムじゃないなんて名画座じゃねえよ」などと思うわけです。いろいろ苦しい事情があるなんて知らないですからね。
また、映画会社がフィルムを持っていても「貸し止め」するというケースもあります。特定のスターや監督の作品を自分の所で特集したり、DVDにしたり、という商売上の理由で名画座に貸し出してくれないという場合です。コンテンツはその会社の商品ですから仕方ないのかもしれませんが、名画座で上映して映画ファンの層を広げようという風に考えた方がいいと思うのですが……。
こういう状況ですから、もう昔のように「シリーズ全作上映」とか「監督作品一挙上映」みたいなことは出来なくなっています。かつての名画座ファンからしたら残念でたまりませんが、それでも今ある名画座は日夜、番組を組んで、フィルムを探しまわり、何とかお客さんに喜んでもらえるように日夜頑張っているのです。僕はそんな名画座に思い入れも強いですし、応援したいと思います。  (ジャッピー!編集長)

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