昨日の当ブログで紹介した『いとはん物語』(1957 伊藤大輔監督)で、京マチ子さんは不器量だが心根の美しい女性を見事に演じました。しかし、デビュー後しばらくは、そのグラマラスな肉体のイメージが先行して、いわゆる「ヴァンプ」役がほとんどでした。大映入社の1949年には『痴人の愛』(1949 木村恵吾監督)の「ナオミ」役に抜擢されています。まさに適役。「ナオミ」を理想の女に育てあげようとして翻弄される「譲治」役の宇野重吉さんも「僕の譲治などどこかにすっ飛んでしまうような……」と述べるほどの存在感でした。
そして、宇野重吉さんに続いて志村喬さんを翻弄したのが『牝犬』(1951 木村恵吾監督)です。この映画で志村さんが演じるのは、真面目で壮健な部長です。朝食の席でも上半身裸で「ワシが健康で頑張っているからこの家が建てられたんだぞ」と言います。かと言って暴君ではなく、病弱な妻(北林谷栄さん)に良さそうな薬の広告を見つけたり、家族思いのいいお父さんです。娘の久我美子さんは「バレエの勉強のためロンドンに留学したい」というのには反対で、「あんな浅草あたりの……いかがわしい」と言います。久我さんは「あれはレビューよ。バレエとは違うわ」と反論します。レビューとバレエの区別もつかないのですから、遊んだことなどない堅物なのです。
そんな志村さん、部下の青木が「浅草美人座」の踊り子に入れこんで金を使い込んだと聞き、出張の帰りに「美人座」に寄ります。このとき上演している演目は「裸体の祭典」です。楽屋でブラとパンツの衣装の京マチ子さんに面会すると、「青木なんて人、知らないわよ」と相手にされません。それどころか、「ちょっと、背中のホックを外して~」などと言われ、たまげた志村さんは逃げ出します。このとき取り引きの大金の入ったカバンを忘れていってしまい、これを京さんの悪い兄(加東大介さん)に拾われてしまいます。志村さんをカモとにらんだ加東さんは、カバンを返すと連れ込み旅館に呼び出します。そこで、京さんにむりやり抱きつかれた志村さん……。
ここで暗転すると、次のシーンではいきなり翌年の夏になっていて、志村さん、すっかり京さんの「パパさん」になって安っぽいバーのマスターになっています。家族も会社も捨てて京さんにのめりこんでしまったのです。この後、映画はすごい展開になっていくのですが、遊び慣れていない男が中年になって本気になると大変なことになるということがよく分かります。ましてや、京さんみたいなフェロモンをプンプン発散させられたらたまりませんね、そんな男の弱さと情けなさを見事に体現した志村喬さん、さすがです!  
この『牝犬』、シネマヴェーラで明後日、9日(日)に上映されます。 (ジャッピー!編集長)
にほんブログ村 その他趣味ブログ 昭和レトロへ にほんブログ村
おもしろいと思ったら、クリックしてください!