昨日の当ブログで書いたように、『長いお別れ』(2019 中野量太監督)を封切早々に映画館に飛んで行って観たのは、原作に感動したからです。ちょうど、僕も母親が認知症になってしまって、「どうして……」と行き場のない気持ちを抱き、思い悩んでいた頃でした。はじめは、何とか母親がちゃんと元に戻るように、毎日、日にちを訊いてみたり、記憶に良いという問いかけをしたり、それがうまくいかないとイライラしてしまったり……。それでも、日々、認知症は進行していくし、いろんなことが起こり具体的にどうするかを考えなければならない状況になってしまいました。
そんな時、ふと、この本を手にし、読み始めると、実に自分が考えたり、悔んだりしていたことと同じようなことが綴られていて、誰にも相談できずに抱え込んでいた僕は何だか話し相手を見つけたようなホッとした気持ちになったのでした。また、原作(8本の短編による連作)で、「帰りたい」と繰り返す昇平おじいちゃんを生家に連れていく話(「おうちに帰ろう」)があるのですが、それが「掛川」で、何と僕の母がそのとき入院していたのが「掛川東病院」だったという偶然もあり、独りで病院行きのバスを待っているときなどに読んでよりいっそう心にささったのです。
映画では、昇平さんの娘は二人姉妹ですが、原作は三人姉妹で、それぞれの生活がある中でおろおろしながら、何とか対処していきます。完璧にはいかないし、ぶつかり合いもしますが、それでもどこかクスッと笑ってしまったり、楽天的なところもあります。そうでないと、やっていられないということを教えてくれます。
そして、文藝春秋が主催した「アルツハイマー病をもっと知ろう。」というセミナーに申し込み、中島京子さんの講演を聴き、そこでも「『恍惚の人』のイメージで一大事とか地獄という風にとらないように」、「物忘れや変なコトを言っても笑えることも多いし、脳の中でどういう風に理屈づけているか考えると分かってくる」とおっしゃいました。そして、ある時、イヤなことがあって悩んでいることをどうせ分からないと思って父に言うと「父の言葉はわけわからないことばかりになってしまっているんだけど、何とか私を慰めようとしているのは分かった」という経験を語ってくれました。つまり、「感情は残っている」ということです。これが原作小説にも出てきて、映画でも蒼井優さんが名演を見せた場面にもなったエピソードです。
話している相手が自分の子どもだと分からなく
なってしまうのは辛いです。言葉も何を言ってるか分からなくなって戸惑います。それでも、「感情」は残っているんです。そんな風に考えると優しい気持ちにもなれるのです。中島京子さんの本と講演はとてもためになり、支えになりました。
(ジャッピー!編集長)
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