当ブログ6月7日、8日で紹介した『牝犬』(1951 木村恵吾監督)、昨日取り上げた『浅草の夜』(1954 木村恵吾監督)と、とにかく踊り子役が多かった京マチ子さん、ずばり『踊子』(1957 清水宏監督)という作品もあります。よく浅草のストリップ劇場などに入り浸っていた永井荷風さんの原作を名匠、清水宏監督が演出した作品です。
『浅草の夜』では、京さんと若尾文子さんが姉妹を演じましたが、この『踊子』では、京さんが妹役。姉を淡島千景さんが演じます。淡島さんは浅草六区の劇場の踊り子で、船越英二さん演じる夫は同じ劇場の楽士です。その夫婦の狭いアパートに突然、田舎でバスの車掌をしていた妹が転がりこみます。「人のやってることは何でもやってみたい」などというこの妹は、天然なのか、生まれながらの小悪魔か、すぐに船越さんと関係を結んでしまいます。船越英二さんは、狭い部屋で色気ムンムンの京さんをチラチラ見たり、優しいけれど意志が弱く頼りない男を見事に体現します。こういう役をやらせたら絶品です!
京さんは、姉と同じように踊子になろうと振付師(田中春男さん)について練習を始めますが、すぐ田中春男さんともできデキてしまいます。とにかく奔放で、堅実な姉・淡島さんと正反対なのです。淡島さんは、船越さんと妹が肉体関係を持ったことを知り嘆きますが、夫を許します。一方、京さんは妊娠し、田中春男さんは「赤ん坊の父親は自分だ」と言いますが、誰の子かは分かったもんじゃありません。産まれた女の子を淡島さんは引き取り、自分の子のように面倒を見ます。もう、聖女のような人です。
京さんは踊子も続かず、アパートを飛び出し、芸者になります。戻ってくるよう説得に行った船越さん、またも京さんの豊満な肉体の誘惑に屈し、ミイラ取りがミイラになります。さらに「日本髪のカツラが重い」と、京さん、今度はお妾さんになります。演じる京さんのキャラクターもあるでしょうが、こう自分の思うままに生きられるとかえって憎めず、羨ましくもあります。ラスト、浅草暮らしの見切りをつけ田舎で保育園をやっている船越&淡島夫妻の所へ「お妾もやめた」とやって来ますが、遠くから自分の娘を見て涙を流すところは、昨今の日本で起こる自分の子どもを殺す母親とは違います。
実際には、淡島さんと京さんは同い年(1924年生まれ。淡島さんの方が一ヶ月早い)ですが、淡島さんは既に『夫婦善哉』(1955 豊田四郎監督)に出ていますから、しっかり者のイメージが確立していますし、京さんは「ヴァンプ」役が多かったので、この「姉妹」役は逆だったらしっくりこなかったでしょう。
妹はすぐ踊子をやめちゃうので、ちょっとだけですが、「宝塚」出身の淡島さんと「大阪松竹歌劇団」出身の京さんがツーショットで踊るシーンは見どころです。また、ロケの野外撮影が得意な清水宏監督らしく、「花やしき」「仲見世通り」「松屋デパート屋上」など、当時の浅草の風景がゆったりとしたカメラ移動で捉えられているのも貴重です。  (ジャッピー!編集長)

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