京マチ子さんは大映入社2年目に『羅生門』(1950 黒澤明監督)に抜擢、「ヴェネチア国際映画祭」でグランプリを受賞すすのは1951年9月なので、日本公開とは時差がありますが一躍「グランプリ女優」となります。(「ヴェネチア国際映画祭」出品のエピソードについては当ブログ5月27日「『羅生門』と永田雅一(ラッパ)さん」参照)
『羅生門』は、盗賊が武士の妻を手籠めにした事件を当事者3人と目撃した杣売りの男、以上4人の証言が食い違うという話ですが、最近、ちょっと『羅生門』的な面白い映画を観ました。『アメリカン・アニマルズ』(2018 バート・レイトン監督)です。2004年、大学生4人が図書館にある希少本を盗み出すという実際にあった事件をモチーフにしています。無目的に生きる若者が「スペシャルな存在になりたい」なんて動機で犯行を計画しますが、行き当たりばったり、思いつきで実行するので狙った本は奪えず、すぐに足がついて逮捕されるというズッコケぶりです。主犯?のウォーレンという男がきわめて短絡的で、仲間になるスペンサーも「何かをしないと変われない」という気持ちに拘ってズルズルと引きずられます。
とにかく、プランが杜撰で、そのくせ『現金に体を張れ』(1956 スタンリー・キューブリック監督)のビデオをみんなで鑑賞したり、『レザボア・ドッグス』(1992 クエンティン・タランティーノ監督)みたいに、お互いを「Mr.ピンク」とか「Mr.イエロー」と呼び合おうとか、すっかりプロ気取りなのです。(このシーンで、ひとりが「でも、『レザボア・ドッグス』駄作だったからなあ」と言うのは笑えました) 本人たちはプロ気取りで成功するつもりですが、完全に「ごっこ」しか見えません。
そんな顛末を描いているのですが、この映画が独特なのは、実際に犯行を行った4人本人が現在の姿で所々にコメントを発するのです! この4人はそれぞれ懲役7年を終えているのですが、何だか役者みたいにキャラが立っているという感じ。最初の方では皆、回想してよく喋っていましたが、犯行シーンになると口数が減り無言になるのもリアルな反応です。
犯行より前にウォーレンが故買屋とわたりをつけ、わざわざアムステルダムまで行くのですが、これについて他の仲間(ご本人)は「あれはウソだ」「ウォーレンは行ってない」などと回想します。ウォーレン(ご本人)自身は「俺を信じてくれとしか言えない」と言うだけで真実はわかりません。この辺、『羅生門』を思い出させます。人間というのは、自分の都合のいいように記憶し、その記憶を信じていたいと思うものだなあとあらためて感じます。4人いれば、4人分の真実があるわけです。最近は、個人的な事情もあり認知症のことを考えていますが、認知症になられた方も頭の中では、覚えておきたい記憶や信じている記憶から「その人の真実」を創造しているんだろうなと思いました。
バート・レイトン監督は元々、ドキュメンタリー映画の作家だったといいますが、斬新な手法でとても面白い映画になっていました!  (ジャッピー!編集長)
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