『約束』(1972 斎藤耕一監督)では萩原健一さんを本気で殴り、『夜の鼓』(1958 今井正監督)では有馬稲子さんの頬ををテストの段階から全力で引っ叩き、真剣で襲いかかって森雅之さんを怖がらせた三國連太郎さん、その役に入りこむ「本気」演技は、『越後つついし親不知』(1964 今井正監督)や『飢餓海峡』(1965 内田吐夢監督)では、セックスシーンであわや「本番」という本気度で女優さんをおののかせました。(当ブログ6月20日、21日、27日参照)
当ブログ6月22日「麻酔なしで上の歯を全部抜いた三國連太郎さん」に書きましたが、『異母兄弟』(1957 家城巳代治監督)では老境に至るまで演じる役のため上の歯を全部抜いた徹底ぶりです。その『異母兄弟』で三國さんから苛め抜かれる後妻役を演じた田中絹代さんは、歯を抜いてきた三國さんを見て「あら、まあ」と驚いたそうですが、これが影響したのか、翌年『楢山節考』(1958 木下恵介監督)で役のため、自分の前歯を抜いています。この映画は深沢七郎さんの原作の映画化で「姥捨て」をテーマにしていますが、ロケは行わずすべて人工のセット、歌舞伎の様式で描くという斬新な手法で撮っています。(フランソワ・トリュフォー監督も絶賛したといわれています) 田中絹代さんの扮した老母はまだ丈夫な歯を石臼に打ちつけて自分から「お山」に行くのです。このシーンのため、田中さんは本当に前歯を抜いたのです。三國さんもスゴイですが、まして田中さんは女優ですから、この役者魂は大したものです。
また、晩年の代表作で、かつて異国に売られた「からゆきさん」だった老女に扮した『サンダカン八番娼館・望郷』(1974 熊井啓監督)では、本当に感動的な演技を見せてくれました。田中さん演じる「おさき」さんの若い頃を演じたのが高橋洋子さんで、高橋さんも体当たりの熱演でした。これは、高橋さんがトークショーでおっしゃていましたのですが、撮影中、出番がなくオフのはずの田中さんがよく現場に来て、じーっと高橋さんの演技を見ていたそうです。何と、田中さんは自分の役の若い頃を演じている高橋さんを見て、その年取った役である自分の演技プランを立てていたのだそうです。逆ならよくあるかもしれません。若手女優がベテランの演技を勉強するために。しかし、あくまで「おさき」という女性の若い頃を見て、その「おさき」が年月を重ね老境に至った姿を演じるために撮影休みの日も来ていたのです。この衰えぬ研究心、頭が下がります。キネマ旬報女優賞やベルリン映画祭女優賞などを獲得したも当然です。
『楢山節考』、『サンダカン八番娼館・望郷』は、7月7日(日)~17日(水)に開催される新文芸坐「キネマ旬報ベストワンからたどる昭和・戦後映画史」において上映されます。田中絹代さんの魂の名演を是非ご覧ください! (ジャッピー!編集長)
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