昨日の当ブログ「映画監督としての田中絹代さん」で書いたように、田中絹代さんは映画監督としても堅実な成果を残しましたが、6作目『お吟さま』(1962 田中絹代監督)を最後に監督としてのキャリアを終えます。
今東光さんの原作の映画化で、千利休(中村鴈治郎さん)の娘・吟を有馬稲子さんが演じますが、これが実に美しく、衣装も息をのむほど綺麗です。また、宮島義勇さんの撮影も絶品です! 吟はキリシタン大名の高山右近(仲代達矢さん)を慕っていて右近にもらった署名入りの聖書を大事にしています。しかし、右近には妻もいるためハッキリしません。吟には、石田三成(南原宏治さん)が勧める縁談があり、返事をする期限が迫ってきます。このとき、吟が右近を訪ね、気持ちをぶつけます。「私は女の命をかけて参っております!」という科白を放つ有馬さんの熱演もあり圧巻のシーンです。田中絹代さんといえば、小柄で言葉つかいも丁寧でたおやかな感じですが、溝口健二監督作品で鬼気迫るような「女」を演じて、「獣の匂いがする女優」と称された方です。やはり、内に秘める「女の情念」が監督作でも迸ってしまうのでしょう。
吟は結局、三成が勧める廻船問屋(伊藤久哉さん)に嫁ぎます。そしえ2年が過ぎ、テキパキと働きますが、心はどこか抜け殻のようです。伊藤さんはネチネチと「お前はまだあの大名を慕っているのだろう!」となじります。伊藤さんは三成の描いた謀略にのって、吟と右近を再会させ、それを「密会」として、右近を罰して片付けてしまおうと企みます。まわりを囲まれた中、何とか山中に逃げ込んだ吟と右近、一年前に右近の妻が病死していることもあり、山小屋でようやく結ばれます、この場面の情愛の高まりも印象的であります。
伊藤さんと離縁となった吟は、今度は秀吉(滝沢修さん)に目をつけられ側にあがるよう命じられます。首を縦にふらない吟に対し、秀吉は卑怯にも「利休の命と引き換えでもか……」と迫ります。吟は「秀吉の女になるぐらいなら果ててみせる」と死を覚悟します。お付きの富士真奈美さんが「死んでは花実が咲かないのでは……」と言うと、吟が「散ってこそ、思いをとげるということもあるのです!」とキッパリと言い放ちます。
ずっと後には熊井啓監督も『お吟さま』(1978 熊井啓監督)としてリメイクしていますが、熊井作品に比べて、メロドラマ度が高いですが、しっかりと権力の横暴へのアンチを描いています。メロドラマの結構を保ちながら、女性の視座でテーマを失わないこの手腕、本当に続けていれば「女性映画」の監督として一時代を築いていた可能性があります。熊井監督は『サンダカン八番娼館・望郷』(1974 熊井啓監督)で名演を見せた田中絹代さんへのオマージュをこめて、『お吟さま』をリメイクしたのかもしれません。  (ジャッピー!編集長)
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