お久しぶりです。しばらくこのブログを書いていなかったのは7月に入りすぐ入院していたからなのです。僕にとっては、初めての入院でした。僕は教員時代、30年目にインフルエンザにかかるまで欠勤したことがない勤め人だったので、自分でも健康というか、少なくとも「入院」するなんてことはないと何となく根拠のない自信があったのです。このまま入院することなく生涯を全うできるかと思っていましたが、人生はそうは甘くありませんでした。

しかも、初の入院だけでなく、人生初めての「手術」、しかも人生初めての「全身麻酔」、点滴を付けたまま、あの車のついた台をガラガラ引きながら歩くのも人生初めてなら、尿管をつけられたり、大人用オムツをつけられたり、人生初のことが怒濤のように押し寄せました。

手術台の上に乗せられ、拘束され酸素マスクを付けられる姿は、今まで数々の映画で何度も観た光景ですが、まさか自分がその絵になるとは思ってもいませんでした。

しかし、「全身麻酔」とはすごいものですねえ。マスクをつけて深呼吸をしているうちに眠りに陥り、看護婦さんに肩を叩かれ目覚めたときには「終わりましたよ」と言われたのですからビックリです。手術室にある時計を見ると、2時間ちょっとが過ぎていました。ちょうど映画1本分くらいの時間、僕のまったく知らない時間が流れて手術が行われていたのです。そしていつの間にか、尿道に管が差し込まれていたのです。もちろん下着もいつの間にか取られておりました。看護婦さんたちに全裸を見られてしまった! と大変な状況でも頭の中ではそんなことを考えてしまうものなのだと自分でも可笑しかったです。

手術後はそのまま酸素マスクをしたまま、身動きできず。このときが本当に苦しかったです。麻酔が切れ、痛みが走る中、頭の中はハッキリしているので、もう色々なことが脳内を駆け巡ります。今まで普段、思い出すことがなかった記憶が蘇ります。今までの人生で出会った人や、本当に些末な場面が浮かんでいくのです。小さい時、学生の頃、勤めだしてからの時代……、今まで思い出すこともなかったささやかな場面がくっきりと甦るのは本当に不思議でした。

このとき思い出したのは、『生きているうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』(1984 森崎東監督)です。原発ジプシーを取り上げたこの映画の中盤あたりで、女性3人(倍賞美津子さん、上原由恵さん、竹本幸恵さん)が浜辺で焚火をしながら話をしているシーンがあります。唄いながら踊ったり盛り上がる中で、故郷の沖縄のコザ暴動を回想したりします。すっかり酔った3人が砂浜に寝っ転がると空に星が輝いています。アイコ(上原由恵さん)が「星は毎晩増えるんや。その日に生まれた人の数だけ……」と話し出します。そして、自分が生まれてから関わった人たちの名前を口に出して並べはじめます。父ちゃんがいた飯場の労働者から、学校の友だち、近所の人々、自分のまわりにいてちょっとでも自分と知り合った、関わった人の名前をとめどなくあげ続けるのです。

これが延々と続き、夜空は白々と明けていきます。1400とか1500もの名前をあげ、バーバラ(倍賞美津子さん)やタマ枝(竹本幸恵さん)の名前も出て来ます。この場面が僕は本当に大好きで、ひとりの人間が今こうしていることにこんなにも多くの人との出会いや関わりがあったんだという感謝と喜びに満ちているのです。この場面を観ただけで、森崎東さんという監督が本当に「人間」に興味があり、「人間」を愛しているかが分かり、この人の映画は信頼できるなあと思えます。

今回、僕も寝たきりになった脳内で今までの人生でほんのちょっとかすった人まで思い出した。また、今回の手術や看護で関わってくれた方々。執刀していただいたお医者さん、血痰をとっていただいたり、オムツを処理してくれたり、細かい所まで気をつかっていただいた看護士さん、術後、口が開けられない僕のために「おかゆ」や副食も細かく刻んでくれた調理の方々、部屋をキレイにしてくれた清掃の方々……確実に「自分」に大切な出会いに加わります。様々な方々のおかげで不安だった入院、手術を乗り越えられました。感謝をすると共に、こうして多くの人たちによって生きながらえた命、丁寧に生きなければと思ったのでした。(ジャッピー!編集長)


にほんブログ村 その他趣味ブログ 昭和レトロへ にほんブログ村
おもしろいと思ったら、クリックしてください!