当ブログ9月9日「追悼・ジョアン・ジルベルトさん」に書いたように、7月にジルベルトさんが亡くなったばかりで『ジョアン・ジルベルトを探して』(2018 ジョルジュ・ガショ監督)というドキュメンタリー映画が公開され、追悼上映のようになりました。同じ映画館「シネマカリテ」で昨年亡くなったバート・レイノルズさんの最後の主演作『ラスト・ムービー・スター』(2017 アダム・リフキン監督)が公開され、僕は先週観に行きました。『ジョアン・ジルベルトを探して』は公開が決まっているところにジルベルトさんの訃報が入ってきたのだと思いますが、『ラスト・ムービー・スター』の方は、レイノルズさんが亡くなったことを受けて公開されたようです。小品なので、オクラ入りする可能性もあったかと思いますが、公開され無事に観ることができて良かったです。

バート・レイノルズさんといえば、昭和世代の映画好きなら主演作を何本も観たことがあるでしょう。ハリウッドで興行収入1位俳優になったこともある大スターでした。(当ブログ20181226日をご参照ください) 頂点を極めたあと、作品にも恵まれず、時代とともに人気が下降してしまいましたが、この映画ではそんなレイノルズさん自身を思わせる「過去のスター」を演じます。

スタントマン出身でスターにのぼりつめたヴィク・エドワーズ(バート・レイノルズさん)は高齢となり広い家に独りで暮らしています。そこに「国際ナッシュビル映画祭」から「特別功労賞」を授与したいと招待を受けます。過去の受賞者はロバート・デ・ニーロさん、ジャック・ニコルソンさん、クリント・イーストウッドさんと聞いて、出掛けるのですが……。マッチョな肉体、男くさい魅力で売ったレイノルズさんが杖をついてヨタヨタ歩く姿はちょっと淋しいけれど味がある好演です。どんな立派な映画祭かと思ったら、地元の映画オタクのような青年たちが手作り感満載でやっているイベントです。イーストウッドさんなど「受賞者」たちも授与されただけで来たことはないのでした。プライドを傷つけられたヴィクは毒づき、帰ろうとしますが、その途中、ふと自分が育った町に寄ることにします。かつて住んでいた家に立ち寄り、母親を思い出したり、子どもの頃好きだったお菓子を食べたり、大学時代アメフトの試合に出たスタジアムで遠い目をします。当然、実際アメフトをやっていて『ロンゲスト・ヤード』(1974 ロバート・アルドリッチ監督)に主演したレイノルズさんが重なります。この「思い出ツアー」でヴィクは自分を振り返り、同行する「運転手」役の若い女の子とのやりとり、次第に共感を覚えて優しい気持ちになっていくロードムービーの仕様になっているのも良かったです。

「スタントマン」とか昔の映画の小ネタを散りばめているところは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019 クエンティン・タランティーノ監督)(聞くところによるとレイノルズさんも出演する予定だったとか)みたいですが、僕はむしろ『運び屋』(2018 クリント・イーストウッド監督)に近いものを感じました。あの映画の中でイーストウッドさん演じる老人が女にだらしなく家庭を顧みなかった人生を悔いるのがまるでイーストウッドさん自身の懺悔のように見えました。(当ブログ2019年3月17日「『運び屋』と『黄昏』」を参照)ヴィクが施設に入っている元の奥さんに会って謝るシーンがあるのですが、これもレイノルズさん自身が人生を振り返っているに見えました。このシーンでは近くの席から何人か女性客がすすり泣いている声が聞こえました。

『ロンゲスト・ヤード』を想起させるだけでなく、『脱出』(1971 ジョン・ブアマン監督)や『トランザム7000』(1977 ハル・ニーダム監督)が引用され、若き日のレイノルズさんと老境に至ったレイノルズさんが共演?という面白い映像もあります。まさに虚実が混在するのですが、ただ過去をノスタルジックに語るだけでなく、若い世代を励まし背中を押すような終わり方なのもグッドジョブです! ラスト、素直に「受賞」するヴィクのスピーチが本当に感動的でした。 (ジャッピー!編集長)

 

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