1031日に俳優の山谷初男さんが85歳で亡くなりました。昔、僕が映画を観始めた頃から、年齢不詳で「気になる」存在感を持った役者さんでした。歳をとってからも貴重な脇役で活躍されていましたから残念です。

山谷初男さんでいちばん有名な作品は『胎児が密漁する時』1966 若松孝二監督)でしょうか。男がアパートの一室に若い女を監禁、サディスティックに調教するというもので、登場人物はこの男女二人だけ。部屋の中だけで展開する実験作です。たしか、若松監督が構えた自宅兼事務所の一室を真っ白に塗って撮影に使ったということでした。低予算のピンク映画界ではよくスタッフの家とかを撮影場所に使ったといいますが、その手法を逆手にとってシュールな空間を作り上げたのです。この男を演じたのが山谷初男さん。このキャスティングについて、若松孝二監督は「要するに奇形児のイメージだよ」と書いておられます。まさに、山谷さんは頭が大きく胴が短い体型でピッタリです。何だか子どものような、老人のような不思議な雰囲気ですが、このとき山谷さん、33歳でした。

その後、若松作品には常連のようによく出ていた山谷さんは、テレビドラマで朴訥な田舎のおじさんなどに扮する一方、70年代には日活ロマンポルノでも印象的な役につくようになります。強烈だったのが、『女地獄 森は濡れた』(1973 神代辰巳監督)です。マルキ・ド・サドの翻案で、森の奥にあるホテルで性に耽溺する6人の男女の乱交が描かれ、「猥褻」と見なされ上映を打ち切りとなり、いわゆる「日活ロマンポルノ裁判」に取り上げられた作品です。(僕はかなり経ってから「アテネ・フランセ」で初めて観ました。今は普通に上映されてます) この映画で男女に様々な痴態を命令するホテル主人を演じたのが山谷さんで、「密室」の権力者という点で『胎児が密漁する時』にどうしてもイメージが連なります。坊主頭の山谷さんはトラウマになりそうなインパクトでした。神代監督お得意の春歌もでてきますが、山谷さんが「秋田音頭」を唄うのは秋田出身の山谷さんのアドリブかもしれません。

さらに『発禁本「美人乱舞」より 責める!』(1977 田中登監督)では、実在の責め絵師・伊藤晴雨さんに扮して、宮下順子さんを縛ったりつるしたりの熱演を見せました。山谷さんは役に成りきって、ずっと同じ衣装を着て撮影所に来てそのままの恰好で帰っていったといいます。ずんぐりした体型で、どこかオドオドした感じの山谷さんがこうもサディスティックな役が多いというのは裡に秘めた「マゾヒズム」が裏返しの形で出るようなことでしょうか、何だか分かる気がします。上記の『女地獄 森は濡れた』では、山谷さんが男女をいたぶりながら、自分も女に鞭でうたれて喜悦にむせぶシーンがありました。サディズムとマゾヒズムは表裏一体という観念を体現していたのですかね。

そういえば、僕が初めて山谷さんを観た『八月の濡れた砂』(1971 藤田敏八監督)では、ヒロイン(テレサ野田さん)の別荘に忍び込んだコソ泥の山谷さんが、村野武範さんと広瀬昌助さんに捕まり、しばり上げられ「犬になれ!」と言われ、ワンワンと犬の真似していました。なるほど被虐の哀れさも見事に合っていたなあ。

数々の映画やドラマで強い印象を残した山谷初男さんのご冥福を心よりお祈りいたします。  (ジャッピー!編集長)

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