朝ドラ『スカーレット』で、貴美子(戸田恵梨香さん)のお父さん(北村一輝さん)がお酒好きで、飲んで帰ってきて短気を起こすと「ちゃぶ台返し」をするシーンがあり、それ以後、家族は「そうないそうな局面」になると、皆でちゃぶ台を押さえるようになりました。懸命な行動です。ちゃぶ台がひっくり返れば、のっていた料理はムダになるし、畳も汚れてしまいます。食器は割れる可能性が高いし、それを踏んでケガということにもつながります。貧しい生活なのに、さらに余計な出費がかさんでしまいますからね。

「ちゃぶ台返し」といえば、ある年代以上の人は当然『巨人の星』の星一徹(声・加藤精三さん)を思い出すでしょう。もうこれは条件反射みたいなものだと思います。それくらい「ちゃぶ台返し」は星一徹のトレードマークのようになっているわけですが、実は一徹とうちゃんは「ちゃぶ台返し」を一回しかやっていないのですね。それは、

飛雄馬が付けさせられていた「大リーグボール養成ギプス」(←今なら、子どもへの虐待行為でアウト間違いなし)を、悪ガキの友だちに挑発され、つい見せてしまっていたのを隠していて、そのウソがばれたときです。一徹は「このウソつきめ!」と言って、飛雄馬を殴ります。このときにちゃぶ台に当たってしまうので、厳密には「ちゃぶ台」自体をひっくり返そうとしたのではありません。あくまで事故です。

しかし、この飛雄馬が友だちに「養成ギプス」を見せてしまうのも、飛雄馬が「ギプス」のバネのせいでぎこちない動きになっているのを「飲んだくれの日雇い人夫の親父のせいでメシも食えないんだろ」とバカにされたのに腹を立てたからです。いわば、一徹とうちゃんをかばって「ギプス」を見せたのですが、一徹にはそんなこと通用しません。即、ビンタが飛ぶのです。この辺も今、放送するとクレームがつくかもしれません。

さて、一回だけしかしてないのに、なぜ「ちゃぶ台返し」というと「星一徹」という風に強い連想を呼ぶかというと、もう多くの人が指摘するように、アニメの『巨人の星』のエンディングで、この「ちゃぶ台がひっくり返る」場面が使われていて、毎回観るたびに目に入るからでしょう。繰り返し見ているうちにイメージとして潜在的に脳に焼き付けられたのだと思います。それに、星一徹の厳しさと、時には暴力的な家長としての絶対性を象徴するのにあまりにピッタリだからでしょうね。

それにしても、その「ちゃぶ台返し」という行為を『スカーレット』の北村一輝さんが継承?しているのは、完全に星一徹タイプの「昭和の親父」のイメージを補完するのに十分です。もう「ちゃぶ台返し」は一種の記号になっているといってもいいでしょう。ちなみに辞書で「ちゃぶ台返し」というフレーズでひいてみましたが載っていませんでした。「ちゃぶ台」は「短い四足のある食事用の台。足の低い食卓。飯台。」と説明があるだけで、「ちゃぶ台返し」は出ていないのです。これはいかんですね。もう、「ちゃぶ台返し」で載せていいと思います。説明は、「『巨人の星』が基となり広がった、ドラマや映画で、昭和の頑固で強権的な父親をあらわすための所作。非常に効果的だが、今のコンプライアンスではその場面に対してクレームがきたり、炎上する恐れがある」といったところでしょうか。  (ジャッピー!編集長)

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