携帯電話をほとんどの人が所持している今の世においては、「メロドラマ」は成立しにくいです。“真知子巻き”というトレンドまで生んだ往年の大ヒット作『君の名は』(19531954 大庭秀雄監督)なんて、再会を約した数寄屋橋の所で会えない時点で携帯を使って連絡すれば、「すれ違い」も起こらず即めでたしめでたしです。『愛染かつら』(19381939 野村浩将監督)なんかもそうです。簡単に居場所が分からないから「すれ違い」が起こり、主人公の男女は怒濤の運命に翻弄されるのです。

『死刑台のエレベーター』(1957 ルイ・マル監督)では、殺人を犯したあとエレベーターの故障で閉じ込められ、恋人のジャンヌ・モローさんに連絡がとれなくなってしまいますが、その日本版リメイク『死刑台のエレベーター』(2010 緒方明監督)はもう携帯が普及した現代。どう処理するのかなと観たら古いビルのエレベーターは「圏外」という設定で乗り切っていました。(←当ブログ20171229日をご覧ください)

さて、さらにWi-Fi環境が整備された2019年の今、「メロドラマ」が成立するかと『マチネの終わりに』(2019 西谷弘監督)を観てみました。クラシック・ギタリストの福山雅治さんと国際ジャーナリストの石田ゆり子さんはお互いに惹かれ合っていますが、どちらも海外で仕事をすることが多くなかなか会うことができません。ようやく、石田ゆり子さんが日本に帰国することになって福山さんは空港に迎えに行くよと連絡します。さあ、空港に行こうというときに、福山さんのギターの師匠(古谷一行さん)が倒れたという知らせが入ります。お世話になった古谷さんの命にかかわる一大事ですから、福山さんはすぐに病院に向かいます。そして、病院に着いてから石田さんに事情を説明しようとするのですが……慌てていたせいか、スマホをタクシーに忘れてしまったことに気がつきます。福山さんはタクシー会社に取りに行こうとしますが、マネージャーの桜井ユキさんが「私が取りに行きますから祖父江先生(古谷さん)の傍にいてください」と代わって取りに行きます。信頼できるマネージャーなので福山さんは頼み、さらに「何か緊急のことがあるかも」と暗証番号まで教えてしまいます。

桜井さんはタクシー会社で受け取った福山さんのスマホを開いて、福山さんと石田さんのやり取りを見てしまいます。桜井さんは実はひそかに福山さんを愛していて、石田さんに嫉妬したのか、「もうあなたとは会わない」というウソのメールまで石田さんに送ってしまいます。これによって、二人はその日、会えないばかりか、何年も疎遠になり、お互い別の人と結婚してしまうのです。(福山さんは桜井マネージャーと一緒になり子どもまでいます。桜井さんの策略は見事に成功したことになります)

この『マチネの終わりに』では、スマホの紛失によって連絡がつかない「すれ違い」、さらに他人に悪用されることによる「誤解」という形で「メロドラマ」を作劇しているわけです。深く考えれば、病院に公衆電話のひとつやふたつあるだろうから、そこから空港に電話して放送かけてもらうとか、福山さん、石田さん共通の知り合いである板谷由夏さんに連絡するとか他の手段はいくらでもあったのですが……すべてを自分のスマホに頼っていて頭が回らなかったんでしょうかね。

今、キャッシュレスが推奨され、何でもスマホで決済したり、個人情報から何からすべてスマホに集約される傾向がありますが、逆にこうして紛失してしまったり、中のデータを盗まれたり、知らない所で何されるか分からないので非常に怖いです。便利になったようで、リスクは高く、手に負えなくなっている気もします。IT弱者の昭和人間はそんなことを思うのでした。  (ジャッピー!編集長)

 

 

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