今年の9月2日に、作家でタレントの安部譲二さんが亡くなりました。82歳です。そういえば、このところテレビや雑誌でお見かけしなかったなあと思いました。安部譲二さんといえば、1980年代半ばころに『塀の中の懲りない面々』がベストセラーになって、テレビにも盛んに出ていらっしゃいました。独特のダミ声で楽しく話していましたが、その目は笑っていてもやはり「ただ者じゃない」眼光を発していたように思います。

僕も当時、『塀の中の懲りない面々』を面白く読みました。安部譲二さんは子どもの頃は「神童」と言われ、名門・麻布中学時代には江戸川乱歩さんの雑誌に自作の小説を投稿していたといいますから、文才があったのでしょう。ただ、それが「官能小説」だったそうで、乱歩さんも呆れるほど、性的に成熟した中学生だったと言われています。おまけに安藤昇さんが率いていた「安藤組」に出入りしていたといいますから恐るべき早熟ぶりです。そんな素行なので「麻布高」に進学できず、留学しますがそこでも寮に女子を連れ込んで放校になったりで、まさに「破天荒」な10代を送ります。

帰国して慶應義塾高校に入るも、暴力団関係との付き合いは深まるばかりで、除籍となり、高校を転々とし、少年院に入ったこともあると読んだことがあります。そして、経歴を隠して、何と、「日本航空」に入社して客室乗務員としてしばらく働くのです。三島由紀夫さんが、この時期の安部譲二さんをモデルに『複雑な彼』という小説を書いています。僕は未読ですが、これを映画化した大映の『複雑な彼』(1966 島耕二監督)は観ています。安部譲二さんをモデルにしたスチュワードを田宮二郎さんが演じていて、どちらかというと恋愛ドラマという感じでした。田宮さん演じる譲二はさまざまな経験をした男で保釈中の身で航空会社に勤めていて、何か政界の黒幕だかに頼まれてアジア情勢を探っているような設定だった気がします。この辺は「前科を隠して」日航に入った実際の安部さんとは違いますね。(いや、表向きはそうだが、密命を受けて入社は本当かも)で、この譲二、とにかく行く先々でモテモテなのです。演じる田宮さんのキザな雰囲気もよく合っていました。譲二に本気で惚れた女性(高毬子さん)と結婚まで考えますが、背中に刺青も入っていてはマトモな幸せは築けない……と破局するのでした。

安部さんは、一時、三島由紀夫さんのボディーガードをしていた時期があるそうで、そこからこの小説が生まれたのでしょう。この作品の「譲二」を安部さんは後年、自身のペンネームにしたわけです。日航を退社後も、拳銃不法所持などで逮捕、服役を重ね、1970年代後半「府中刑務所」で過ごした経験を書いたのが『塀の中の懲りない面々』だったのです。そして、このベストセラーを映画化した『塀の中の懲りない面々』(1987 森﨑東監督)がまた良い映画でした!

いろいろ裏道も通って経験した興味深い話をユーモアを交えて書き、本やその映画化作品で楽しませてくれた安部譲二さんのご冥福を心よりお祈りいたします。

(ジャッピー!編集長)

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