今年の10月7日にイラストレイターの和田誠さんが亡くなりました。83歳です。ここ数年、「週刊文春」の表紙も過去のものが使われていたり、毎日新聞の日曜日の読書欄のイラストも南伸坊さんに交代していたりで、お体の具合が悪いのだろうと思ってはいましたが、何となく和田さんは長生きされるようなイメージを勝手に思っていましたので、驚きましたし、残念でなりません。

和田誠さんといえば、「キネマ旬報」で連載していた「お楽しみはこれからだ」のページがまさにお楽しみでした。「キネ旬」は、ベストテン決算号とか、特集が気になる号は買っていましたが、だいたい図書館で読んだり、立ち読みをしていました。真っ先に開くのが「お楽しみはこれからだ」の4ページでした。その後は、一冊にまとまった「お楽しみはこれからだ」(文藝春秋・刊)も買い、繰り返し読んだのでした。

多くの映画好きと同じように、僕もよく和田さんのイラストの真似をして、俳優の似顔絵を描こうとしたものです。「線画」なので、何となく自分にも「描ける」ような気がしてしまうんですよね。しかし、もちろん、出来上がった画は、その俳優とは似ても似つかぬ顔になっていて、あらためて和田誠さんのイラストが、いかにその人物の特徴をとらえ、それをシンプルに描出する凄さを思い知るのでした。

そして、イラストが無理と悟ってからは、映画の名セリフぐらいは覚えておこう!と自分でも気になった映画の中のセリフをノートに書き留めたりするようになりました。和田さんは「日本映画」も取り上げてはいましたが、主に「外国映画」を取り上げていましたから、僕は自分が主に観ていた「日本映画」で名セリフを集めて、いつの日か、誰かイラストを描ける人に手伝ってもらって日本映画版の「お楽しみはこれからだ」を出したいなどという果てない野望を持ったりしました。しかし、忙しさにかまけてメモを忘れたり、何日か経つとセリフや前後の文脈を覚えてなかったりでなかなか出来るものではありませんでした。(今も、思い出したように、映画を観たあと印象に残ったセリフを手帳に書くことはありますが)

その後も和田さんの著作を次々に読んでいき、その「映画愛」に触れ、元々好きだった映画にますますのめりこむようになったのです。和田さんは映画関連の著作の中で、決して作品をけなしたりバカにしたりしないのがいいのです。映画を観始めてから、いろいろ評論家の本を読んできましたが、人によっては「映画愛」を感じられない人もいますが、和田さんは映画について本当に好きでたまらないという気持ちがあふれているように思います。

僕が最後に読んだ和田さんの本は、昨年秋に出た「忘れられそうで忘れられない映画」(ワイズ出版)です。「はじめに」という序文に「批評家はあまり誉めなかったし、大ヒットはしなかったし、賞はもらわなかったし、ベストテンにも入らなかったけれども、俺は好きなんだよなあと言えるような映画。他人が何といおうと愛すべき作品だとぼくが勝手に思っている映画。そういう映画について、思い出すかぎり書いてみよう」とあります。いいですよね! 好きな映画を思い出し、語ることぐらい楽しいことはないですからね。

その通り、この本に取り上げられている19本の映画には僕が観たことない映画も何本かあるのですが、和田さんの文章を読んでいるうちにまるで「観た」ような気持ちになるのです。スクリーンを見つめているような感じに思えるのです。それは、その映画に対する深い「愛」があるゆえの文章だからです。この本は、2011年以降に書き綴られた未発表エッセイ集で、載っているイラストは過去に描かれたものの引用なので、描きおろしはもう体調が許さなかったのかもしれません。でも、その内容は映画ファンへの最後の贈り物のように思えたのでした。

長い間、イラストや文章、またご自分でも映画を監督されて「映画愛」を分け与えてくれた和田誠さんのご冥福を心よりお祈りいたします。(ジャッピー!編集長)

 

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