昨日の当ブログ「追悼・梅宮辰夫さん」でも書きましたが、梅宮辰夫さんは演技というより、梅宮さんという俳優が生きてきた時間の集積みたいなものがイメージを形作っているような存在感を見せる人だと思います。「夜の青春シリーズ」、「帝王シリーズ」といった風俗映画で「ひも」や「スケコマシ」「ジゴロ」といった役を延々と演じてきました。これらはメインの映画の添え物として公開されていた作品で、高倉健さんや鶴田浩二さんといった東映の「顔」といえるスター映画に対して、あくまでB面という感じでした。梅宮さんはニューフェイス5期生ですが、デビューは「第二東映」ですから、いわば二軍スタートです。しかし、そういうB面を生きてきた「俳優」と「役」が混じりあって味を出したように思います。『前略おふくろ様』で演じた、板前の秀次役もまさにそうで、最初にキャストされていた小林旭さんだと、「華」がありすぎるように感じます。

そんな梅宮さんの「味」がよく出たと思うのが、『仁義なき戦い』(1973 深作欣二監督)だと思います。実録路線の嚆矢となった日本映画の歴史に残る名作ですから、説明するまでもないですね。梅宮さんの訃報を伝える新聞、ニュースでも「『仁義なき戦い』などに出演の梅宮辰夫さんが亡くなる」という説明をしていました。この『仁義なき戦い』第1作で、梅宮辰夫さんが扮したのは「若杉寛」というヤクザで、主人公の広能昌三(菅原文太さん)がムショの中で出会い、お互いの腕の血をすすって兄弟分になります。この若杉はカミソリで割腹するという荒技で出所を果たす、度胸たっぷりの男です。上田(伊吹吾郎さんの腕を叩き斬るハードな場面もあります。

若杉はのちに出所した広能の兄貴分として、敵対する組同士の抗争を抑えようと山守親分(金子信雄さん)の側につきますが、裏切られ槙原政吉(田中邦衛さん)のチンコロ(密告)で警察に追いつめられ射殺されてしまいます。映画の中盤あたりで死んでしまうので、出番はそんなに多くないのですが、この「若杉寛」という男は何だか気になるのです。妙に印象に残るのです。かなりの戦歴を誇るヤクザですが、何だか周囲のヤクザたちに馴染んでいない孤独感みたいなものを感じさせるのです。

警察に追われて、愛人の実家らしき家に潜伏するのですが、いよいよ警官隊が踏み込んでくるというとき、若杉は学生服のマントを着込み変装して「テンプラに見えんかのう」なんて言いながら布団をかぶり隠れます。そして、ついに警官が布団を引っぺがすと若杉は拳銃を構え、銃口を向けているのですが、このときの表情が何だか不敵なんですが、うっすらと微笑を浮かべているように見えます。劇中、「若杉寛」の来歴など語られないのですが、この、一瞬の表情は「若杉寛」という人物の生い立ちやそれまで生きてきた軌跡を想像させてしまうのです。人生の悲哀や無念ややりきれなさを滲ませていて、これは梅宮辰夫さんでないと出せなかったのではないかと思います。延々とB面を演じ続けた梅宮さんのキャリアの年輪を感じさせるのです。名場面、名セリフの多い『仁義なき戦い』ですが、僕はこの梅宮辰夫さんの一瞬の表情のために少なくとも10回は観ています。 (ジャッピー!編集長)

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